小胞体のはたらき

小胞体は、小胞体膜にある狭い穴であるトランスロコンを通って小胞体内に入ってきたタンパク質の疎水性アミノ酸の連なりに分子シャペロンが結合し、タンパク質が高次構造を形成するのを助けます。

小胞体はホルモンなどのタンパク質が通過するただの廊下のようなものだと考えられていました。しかし、小胞体で正しい高次構造を形成したタンパク質だけが、小胞輸送によってゴルジ体に移動することが解明されました。正しい高次構造を形成しなければ、小胞体という「関所」を通過することができないのです。

小胞体を通過できなかったタンパク質は、小胞体から細胞質へ移動させられ、ユビキチン化され、プロテアソームによって分解されます。このシステムは「小胞体関連分解」と呼ばれます。

小胞体に適切な立体構造ではないタンパク質が増加する小胞体ストレスと呼ばれる状態になると、分子シャペロンをコードしている遺伝子の部分のDNAの転写が促進され、分子シャペロンがたくさん合成されます。そのため小胞体内の分子シャペロンが多くなり、それらが異常なタンパク質を修復しようとするのです。

小胞体ストレス時に小胞体シャペロン遺伝子の転写が活性化され、小胞体シャペロンの1mRNAを翻訳することによってシャペロン分子を増加させようとする流れは「転写誘導」と呼ばれます。小胞体シャペロンを転写誘導して構造が正常ではないタンパク質を修復する反応は「小胞体ストレス応答」と呼ばれています。

小胞体ストレス反応ではひとつの細胞の中の細胞小器官どうしでシグナルが伝わります。ホルモンのシグナルは細胞表面に受容体があって、それが核に伝わるというような細胞間のシグナル伝達とは異なるものになります。

小胞体ストレス応答が起こるためには3つ必要な機能が備わっていなければなりません。

1 小胞体内に立体構造が異常なタンパク質がいつも以上に蓄積していると判断するセンサー機能
2 小胞体ストレス時に小胞体シャペロン遺伝子の転写を活性化させる転写調節を行う遺伝子
3 1のセンサーのシグナルを2の遺伝子に伝える仕組み

この3つの機能がなければ小胞体ストレス応答は起こりえません。

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