DNAの複製についてわかりやすく解説!

この記事では、DNAが複製される方法について、初学者でも理解できるようにわかりやすくまとめてみました!

DNAの塩基はファスナーのように分かれる

DNAの塩基はAとT、GとCで水素結合によって結ばれ、対を作っています。

水素結合は弱い結合なので、DNAの二本鎖のらせん構造は簡単に分離して、2本にわかれます。ファスナーのチャックを下ろすと、2つに分かれるようなものだと想像してください。

DNAはファスナーのように2つに分かれる

半保存的複製

DNAの複製は「半保存的複製」と呼ばれることがあります。半保存的複製と呼ばれるのは、新しくできた二本鎖DNAの1本は、複製前のDNA鎖がそのままの状態で「保存」されていて、もう片方の鎖だけが新しく合成されたものであるからです。

このように文字で説明してもピンとこないと思うので、イラストを使って詳しく説明していきます!

細胞の核の中にはヌクレオチドがたくさんあります。DNAの複製では、2本に分かれた一本鎖DNAのそれぞれに、周りにたくさんあるヌクレオチドが次々に結合することで再び2本鎖に戻るという流れで、新しく2本鎖DNAが2本できるのです。

DNA複製のようす

二本鎖DNA ✕ 1

一本鎖DNA ✕ 2

二本鎖DNA ✕ 2

という流れで、DNAは複製されます。なので、このような複製方法では、新しくできた二本鎖DNAの鎖のうちの1本は古い鎖、もう1本はヌクレオチドが並んでできた新しい鎖となります。これが半保存的複製と呼ばれる理由です。

DNA複製が始まる前の下準備

何かを行うにはそのまえに準備が必要です。劇の発表会を行うためには、

① 台本を書く
② 役を決める
③ 練習をする
④ リハーサルをする

というような決まった順序通りに段階を踏んで、はじめて本番を行うことができます。

DNAの複製もこれと同じで、「DNA複製」という本番のためには、いろいろな下準備が必要で、その下準備の順番も決まっています。台本がないのに役は決められませんし、練習をしていないのにリハーサルを行うことはできません。また、リハーサルを行ってから台本を決める、などと順序を入れ替えることもできませんね。

DNAの複製の下準備はどのようなものなのでしょうか?

① オーク(複製起点認識複合体)

DNA複製の下準備として、まずはじめに行動をはじめるのが「複製起点認識複合体」または「複製開始点認識複合体」というタンパク質です。先ほどの例を使うと、「劇の発表会をしようよ!」と皆を巻き込む「言い出しっぺ」のような存在です。

複製起点認識複合体は「Origin recognition complex」という言葉の和訳なのですが、長いので、単に「オーク(Orc)」と呼ばれることが多いです。オークはいつもDNA上にあるDNAの複製が開始される場所に存在していて、オークがいる場所が「複製起点」と呼ばれます。

② 複製前複合体

複製前複合体とは、オークが複製起点に存在する場所に集まってくるタンパク質の一群のことです。まず「Cdtl」と「Cdc6」という2種類のタンパク質が複製起点にやってきます。この2種類のタンパク質は「MCM」というタンパク質を呼び寄せるはたらきをもっています。

そして、招きに応じてMCMがやってくると、3種類がまとまって複製前複合体というタンパク質の一群になるのです。

複製開始複合体

複製前複合体が形成されると、次に複製起点にやってくるのは「Sld3」と呼ばれるタンパク質です。Sld3は複製前複合体に結合し、「Cdc45」というタンパク質を呼び寄せる役割を担います。

Sld3の招きに応じて複製起点にやってきたCdc45は、MCMと結合します。

Sld3とCdc45が複製起点に加わると、すでに結合していたCdt1とCdc6は離れていくか、そうでなければ分解されてしまいます。そして、入れ違いになるように「Sld2」「Dpb11」「GINS」というタンパク質がやってきて、それにDNAポリメラーゼも加わります。1これが複製開始複合体で、やっと複製開始の準備が整いました。

DNAの複製はきわめて正確

DNAの複製は極めて迅速に行われます。細菌では毎秒数百ヌクレオチドが合成されます。哺乳類や鳥類などではもっと遅く、その十分の一くらいの速度ですが、それでも速いものです。しかし、その速さにもかかわらず、DNA修復において、間違いが起こるのは10億から100億ヌクレオチドに1回といわれています。

DNA配列が間違って複製されると大変なことになります。DNA配列が異なった細胞がたくさんできてしまった状態は癌とよばれます。DNAが間違って複製されることは深刻な病気につながってしまいます。なので、DNAの複製はきわめて正確なのです。

https://seibutsujournal.com/dna-repair/n

追記・参考文献

  1. GINSは国立遺伝学研究所の荒木弘之博士らが発見したタンパク質で、数種類のタンパク質から構成される複合体です。GINSを構成するタンパク質はSld5・Psf1・Psf2・Psf3という名称です。これらの数字を並べると「5(Go)・1(Ichi)・2(Ni)・3(San)」となり、GINSと呼ばれています。日本人の研究者が発見したタンパク質だからこそ、このような名称になったのですね。参考:『DNA複製の謎に迫る 正確さといい加減さが共存する不思議ワールド』武村政春, 講談社, 2005
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