合成生物「syn3.0」- ゲノムを限界まで削ぎ落として作られた合成生物

syn3.0は世界で最初の合成生物です。人によって作られた生物なので、自然界には存在しません。

化学的に必須な遺伝子だけを含むDNA分子を合成して作られた生物で、アミノ酸や低分子栄養素を含んだ培地で増殖できる細菌の遺伝子の最小セットを同定するために作られました。

このsyn3.0の遺伝子数は473個であり、これは大腸菌の遺伝子が約4000個、人の遺伝子が約25000個であることから考えても、極端に少ない遺伝子数です。ゲノムの大きさもとても小さく、0.5Mbしかありません。

1kbはDNAの1000塩基対のことです。また、1000kb=1Mbです。ヒトのゲノムサイズは3200Mbなので、3200000kbです。

必須な遺伝子とは、ただ単体で必要であるか否かというだけではなく、ひとつが欠如すると、他の遺伝子の働きが損なわれ、生育に問題が生じるような場合があります。ひとつの遺伝子が必須でないように見えても、他の遺伝子の働きを制御していることがあるので、必須となってしまうのです。

syn3.0は、マイコプラズマという肺炎を引き起こす細菌と酵母を利用して作られました。酵母によって合成断片を順序正しく整列させ、DNA分子を複製しました。完成したゲノムをDNAを破壊したマイコプラズマ細胞に注入し、生育に成功させました。

syn3.0のゲノムを構成する遺伝子の大部分は、翻訳(22%)、輸送(15%)、代謝(11%)、RNA合成(13%)のような機能に関わっていました。DNA複製と修復に関わる遺伝子は6%で、また、機能のわからない未知の遺伝子は17%を占めます。

この遺伝子の構成の割合は、一般的な生物の遺伝子の構成に類似しており、生物の分子的な統一性を示唆しています。

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