「石けんで手を洗いましょう」「アルコールで消毒しましょう」とよく言われますが、どうして石けんやアルコールがウイルスに対して有効にはたらくのか知っている人は案外、少ないかもしれません。また、ウイルスの種類によっては、石けんが効果がないものもいます。
どのようなウイルスに石けんが効果があるのか、なぜ効果があるのかを解説します。
ウイルスに対して石けんでの手洗いやアルコール消毒が有効なのは、
ウイルスの構造に関係があります!
ウイルスの構造
ウイルスの基本的な構造は下のイラストのようになっています。ウイルスの外側は、タンパク質でできたカプシドという殻に覆われていて、その中にDNAやRNAが入っているという構造をしています。
ウイルスの中には、コロナウイルスのようなRNAウイルスもいますし、人間を含むその他の生物と同じようにDNAを持つウイルスもいます。ウイルスというと、単純な球体の物体を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、バクテリオファージのような複雑な構造をもつウイルスもいます。
ウイルスのDNAやRNAはカプシドという殻で守られているのですが、コロナウイルスやインフルエンザウイルスはカプシドの外にさらにエンベロープという膜を持っています。エンベロープにはウイルス特有のタンパク質が埋め込まれています。そして、エンベロープは脂質で構成されています。
エンベロープが脂質であるというのがポイントです!
石けんやアルコールがエンベロープを破壊する
石けんの分子は水と結合しやすい親水基の部分と、油と結合しやすい親油基(疎水基)の部分で構成されています。このように水と結合しやすい部分と水と結合しにくい部分の両方をもつ分子は、表面活性という能力を持ちます。表面活性とは他の液体の表面張力(まとまろうとする力)を小さくさせるはたらきがあります。石けんや洗剤など、強い表面活性を持つ物質は界面活性剤と呼ばれます。
石けんで手を洗うと、石けんの親油基の部分が、脂質であるウイルスのエンベロープと結合します。そして、親水基の部分は水と結合します。そのため、エンベロープの脂質が破壊されて(溶けて)しまい、ウイルスが「健康」であるために必要なタンパク質も一緒に破壊されてしまいます。
このようなメカニズムのため、エンベロープを持つコロナウイルスやインフルエンザウイルスに対して、石けんで手を洗うことが有効な対策となるのです。アルコールにも同じようにウイルスのエンベロープを破壊する作用があります。
しかし、石けんやアルコールが有効なのはエンベロープがあるウイルスのみで、ノロウイルスやアデノウイルスにはあまり効果がありません。