遺伝子の効果と似たような表現型が遺伝子の影響ではなく、環境の影響によって生じる現象を表現模写(phenocopy)といいます。
表現型の多くは遺伝子による影響か、または環境による影響によるものの2つに分けられます。『氏か育ちか(nature or nurture)』という表現がありますね。氏が血縁、つまり遺伝子を指しているとすると、表現模写の場合は「育ち」のほうに当てはまるということです。
表現模写の最もよく知られている例は糖尿病です。糖尿病には遺伝子型による先天性の1型糖尿病と、食生活や肥満、膵臓の損傷による2型糖尿病の2種類があります。どちらも糖尿病ですが、その原因は異なっています。
特定の薬品によって、遺伝子による影響と同じ効果を引き起こすこともできます。たとえば、ショウジョウバエに硝酸銀を大量に食べさせると、遺伝子による黄体色突然変異をしたハエのような色に変化させることができます。
ある1つの家系において、頻繁に見られるというだけでは、それが遺伝子によるものであるとは断定できません。ほとんどの形質は単純なメンデル性遺伝をしないからです。あるひとつの家族で頻出している病気は、その家族の食生活や生活習慣によるものであるかもしれないからです。
氏か育ちのどちらがある表現型の原因となっているかは、養子の研究、そして一卵性双生児の研究によって主な有力な証拠となります。