エンドウの種子はどうしてシワができるのか

アミロペクチンを合成する酵素SBEⅠ

エンドウの丸の種子は優性(顕性)、シワの種子は劣性(潜性)です。種子を丸くする遺伝子は、デンプン分枝酵素Ⅰ(starch-branching enzymeⅠ,SBEⅠ) というタンパク質を合成する遺伝子です。

このSBEⅠはアミロペクチンという分枝鎖型のデンプンを合成するために必要な酵素です。この酵素を作る遺伝子はW(wrinkled)と表記されます。

SBEⅠがなければ、アミロペクチンは合成されないので、劣性ホモ接合のエンドウ(ww)ではアミロペクチンは合成されません。ヘテロ接合の個体(Ww)は優性ホモ接合(WW)の半数の量のSBEⅠしか持ちませんが、酵素は少量でも十分に働くので優性の形質を表すことになります。

シワができる理由

エンドウの種子は乾燥すると水分を失って縮みます。水分を失うとき、アミロペクチンがある優性形質の種子は大きくて丸みのあるデンプン粒なので、種子が水分を保持し、熟すにつれて、均一に縮みます。

しかし、劣性の形質はアミロペクチンがないため、種子が熟すときに水分を急速に失って不均一に縮みます。このため、シワができてしまうのです。

分子レベルではWWとWwは別の形質と考えられる

肉眼で見るレベルではWW型とWw型はどちらも優性形質を表しますが、Wwの個体はWWの個体の半分しかSBEⅠを合成することができません。それゆえに、デンプンの粒の形も異なります。分子レベル(デンプン)で考えると、WWとWwは別の形質であると考えられるのです。

顕微鏡を使って分子レベルで観察すると、WWの遺伝子型のエンドウの種子は、大きくて丸みのあるデンプン粒で、wwの個体のデンプン粒は小さくて不揃いです。

目に見える種子のレベルではAaは丸い形をした優性の形質を示すのですが、Aaは中間的な形質を示します。なので、完全に優性とはいえないのです。

WW
大きくて丸い
デンプン粒

Ww
大きくて不揃いな
デンプン粒

ww
小さくて不揃いな
デンプン粒

どのような表現型に着目するかで、優性・劣性という表現型は変わってしまうものなのです。

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