染色体地図とは、染色体上の遺伝子の並んでいる順序や、遺伝子の間の距離を相対的に示した図のことです。染色体地図には、遺伝的組換えの頻度から作成した遺伝的地図と、実際のDNAの距離をもとに作成した物理的地図の2種類があります。
この記事では組換えが行われる頻度によって遺伝子地図を作る方法を説明しています!
- 遺伝的地図の作成方法
- モルガン- 交叉が1回起こる平均の距離
- 二重交叉によって交叉が起こっていないような実験結果になる場合
遺伝的地図の作成方法
交叉が起こるのは偶然だとすると、2個の遺伝子が同一の染色体上で遠くに位置しているときは頻繁に、近くに位置しているときは稀に、その2つの遺伝子は分けられることになります。交叉が起こると、その2つの遺伝子は連鎖しないで、独立することになります。
なので、遺伝子Aと遺伝子Bの間の交叉が、遺伝子Cと遺伝子Dの交叉の2倍起きていたら、A-B間はC-D間に比べて2倍離れていると推測できます。こうして、染色体上の相対的な位置関係を決定することができます。
ニワトリの遺伝子の例で染色体地図の作成方法について考えてみましょう!
ニワトリには眼が褐色になる遺伝子Brと淡い産毛が生える遺伝子Liがあります。そして、この2つの遺伝子BrとLiの間では、10%の組換えが起こります。また、羽が銀色になる遺伝子SとBrの遺伝子の間では24%、SとLiの間では16%です。
・ Br – Li 間 10%
・ Br – S 間 24%
・ Li – S 間 16%
これらの値から考えると、その並ぶ順番と距離の配列は以下のようになります。
10と16を足しても24にはなりません。しかし、とりあえず、これ以外が最も妥当で唯一の遺伝子配列の可能性です。実は、10と16を足した26の苞が正しいのですが、その理由は後述します。
もう1つ、遺伝子を加えてみましょう。ニワトリには生えるの遅い羽があります。遅羽性にはKという遺伝子が関わっています。そして、それぞれの遺伝子との組換え率は以下のようになります。
・ S – K 間 11%
・ Li – K 間 27%
遺伝子Kを染色体地図に書き加えると、以下のようになります。
この遺伝子地図は、染色体上のどこにおいても、交叉が等しい頻度で起こるという仮定がされています。なので、実際の遺伝子の物理的距離というわけではありません。実際は、染色体の各場所における交叉の頻度は異なります。
しかし、この染色体地図においても、遺伝子の順序は正しいことになります!
モルガン- 交叉が1回起こる平均の距離
このような染色体地図の作成はT・H・モーガンのショウジョウバエ研究室で行われました。モーガンはショウジョウバエの眼の色に注目して伴性遺伝を発見した研究をした人です。はじめて染色体地図を思いつき、それを作成したのは、モーガンの弟子であったA・H・スターテバントです。
そこで、モーガンの功績をたたえ、平均して交叉が1回起こる距離を1モルガンと呼んでいます。なので、1%は100回中1回交叉が起こるということになります。このような、1%の組換え率は1センチモルガンという単位で表します。なので、ニワトリの遺伝子BrとLiは10センチモルガン離れていて、LiとSは16センチモルガン離れていることになります。
二重交叉によって交叉が起こっていないような実験結果になる場合
では、先ほどの染色体地図で、どうして、26センチモルガンと出るべきBr-S間が24センチモルガンという実験結果が見られたかについて考えていきましょう。
この数字の相違は、二重交叉によって説明ができます。二重交叉は、1回の交叉で二カ所交叉が起こることを指します。詳しくは別記事をご覧ください。
二重交叉が起こることで、Br-S間の実験結果には二重交叉の有無は反映されません。Liの遺伝子は入れ替わっていますが、BrとSの遺伝子は交叉前も交叉後も変化はありません。
そのため、
・ Br – Li 間 10%
・ Br – S 間 24%
・ Li – S 間 16%
という実験結果のBr-S間の部分の値が正確に実験結果に反映されなかったのです。
このように、検出できない多重交叉について補正するためには地図作成関数という数学的関数が用いられます。