染色体の不分離とは、減数分裂において、染色体が一本ずつ分かれずに、1つの卵に同一の染色体が2本とも入ってしまうことです。この染色体の不分離は、C・G・ブリッジスによって、ショウジョウバエの眼の色に関する研究を通して発見されました。
1910年頃、モーガンが伴性遺伝について発見をしました。ブリッジスはそのモーガンの弟子で、伴性遺伝に関連する例外を研究していました。
この記事ではブリッジスの研究について述べつつ、X染色体の不分離について説明します!
ブリッジスの実験を理解するためには、モーガンの実験について知っていた方がわかりやすいので、モーガンがどのようにして伴性遺伝を発見したかを知らない方は、さらっと下の記事を先に読むことをおすすめします。
ショウジョウバエの目の色は伴性遺伝をしています。そのため、白眼の雌と赤眼の雄とを交配すると、子供の世代は雄は白眼で雌は赤眼になります。しかし、稀に赤眼の雄や白眼の雌が生じました。
これは染色体の不分離で説明できます。
X染色体をもたない胚は死んでしまい、X染色体を3本持ったトリプルX(超雌)の個体も成虫になるまえに死んでしまいます。しかし、
・ wのX染色隊を2本、そしてY染色体をもった白眼の雌
・ WのX染色体だけをもった雄
の2種類のショウジョウバエは生き残ります。通常ならば、子供は雌が赤眼、雄は白眼になります。しかし、X染色体の不分離が起きることによって、それが逆になるのです。
この結果がどのようなことを示すかというと、眼の色の遺伝に例外があるときは染色隊の構成にも例外が伴っているということです。
このブリッジスの研究がなぜ遺伝学の歴史的に重要かというと、1916年、この実験が行われた当時は、まだ染色体が遺伝において重要なはたらきを担っていることも、その遺伝物質がDNAだということも解明されていませんでした。しかし、染色体の不分離が起こるとわかったことで、それまで遺伝について説明ができなかったことが説明できるようになり、遺伝の基礎が染色体にあること(遺伝の染色体説)が決定づけられたからです。
また、上記の結果から、X染色体がひとつだけある場合は雄になりますし、Y染色体があってもX染色体が2本あったら雌になります。つまり、ショウジョウバエの性決定はヒトとは異なっていて、ショウジョウバエでは、Y染色体は性決定において役割は果たしていないということになります。