ヌクレオソームとヒストンタンパク質についてわかりやすく解説!

真核生物染色体はDNAとタンパク質によってできています。染色体1本に含まれるのはDNA分子1個だけなのですが、1個といっても、それは途切れなく長く続いている分子1個です。

ヒトの代22番染色体は約4800万塩基対から成っており、DNAを伸ばしたら、端から端までが1.5cmになります。しかし、細胞分裂のときにはわずか2㎛で、伸ばしたときに比べたら、DNAは1万倍近く凝縮されていることになります。

これほど長いDNA分子はどのようにしてひとつの核中に46本も収まっているのでしょうか?

クロマチンとヒストンタンパク質

DNAの圧縮を行っているのはタンパク質です。染色体中の主なタンパク質であるヒストンタンパク質が、DNAを巻いて、折りたたんで高次構造をつくらせ、さらにそれを何段階も重ねています。

DNAがたくさんのヒストンと結びついている集合体のことをクロマチン(染色質)とよびます。クロマチンは安定してきれいに並んでいて、ヒストンがたくさん含まれています。細胞1個あたり数種類のヒストンが6000万分子以上あります。

真核生物のクロマチンには、5種類のヒストンタンパク質があり、H1・H2A・H2B・H3・H4とよばれています。ヒストンは100~200アミノ酸程度の小さなタンパク質で、そのアミノ酸の20%〜30%は正電荷をもっている塩基性のリジンとアルギニンです。普通、タンパク質はリジンとアルギニンを数%しか含まないので、他のタンパク質とはかなり異なっています。

DNA糖リン酸主鎖の負に帯電したリン酸基と、ヒストンのアミノ酸の正の電荷の電気的引力によって、DNAとヒストンの結合が起こります。また、ヒストンタンパク質同士も強く結合しています。DNAとヒストンとの結合と、ヒストンとヒストンとの結合の両方がクロマチンの構造の決定に重要なのです。

H1以外のヒストン分子は、異なった種の間でもとてもよく似ています。特に、H3やH4のアミノ酸配列はすべての種でほぼ同じといってよいほどです。たとえば、ウシとエンドウのクロマチンのH3の配列は135アミノ酸のうち、4アミノ酸が違うだけです。これはとても珍しいことです。

ヒストンタンパク質のアミノ酸構成がこれほど種の間で保存されているのは、真核生物の染色体の構造編成において、ヒストンがいかに重要であるかということを示しています!

染色体の基本単位ヌクレオソーム

電子顕微鏡で見ると、クロマチンはコイル状の繊維を形成した規則的なビーズが連なったような構造にみえます。これをヌクレオソームといいます。

ヌクレオソームは1974年に発見されました。クロマチンをDNA分解酵素で短時間だけ処理して電子顕微鏡で調べると「糸に通したビーズ」のような形が見えます。糸はDNAで、ビーズはヒストンにDNAが巻き付いたヌクレオソーム・コア粒子です。

ヌクレオソームの構造

ヌクレオソーム・コア粒子はH2A、H2b、H3、H4がそれぞれ2個ずつ集まった八量体で、その周りをDNAが1.7回転分巻き付いています。ヌクレオソーム同士を橋渡ししているDNAはリンカーDNAとよばれます。1ヒストンH1はヌクレオソーム同士の橋渡しの役割を担っています。

ヌクレオソーム・コア粒子間のリンカーDNAの長さは数塩基対から約80塩基対までさまざまです。ヌクレオソームを形成するとDNA分子は元の約3分の1の長さのクロマチン繊維となります。これが、DNAを圧縮する折りたたみの第1段階です。

DNAはさらに折りたたまれてクロマチン繊維を形成する

ヌクレオソームとクロマチン繊維

染色体のDNAのほとんどは長く連なったヌクレオソームとして存在していますが、実際の細胞では、クロマチンが、糸に通した真珠のネックレスのように伸びきった状態になることは滅多にありません。むしろ、ヌクレオソームはさらに重なり合って、より凝縮したクロマチン繊維になっています。

クロマチンの折りたたみ方はぐちゃぐちゃなようにもみえるのですが、実際は結び目やもつれができないように整然と折りたたまれています。クロマチン繊維になるための凝縮にはヒストンH1が必要で、H1が隣り合ったヌクレオソームを引き寄せて、ヌクレオソーム・コア粒子から出て行くDNAの経路を変えることで規則的に繰り返す凝縮した形にならべていると考えられています。

クロマチン繊維は、約100kbのDNA量の小さなクロマチングループに折りたたまれ、ループはさらに約1MbのDNA量をもつクロマチンドメインを構成します。

細胞分裂時にはDNAはさらに凝縮される

細胞分裂時にDNAが凝縮していなければ、染色体が絡まって、娘細胞へのDNAの分配が正しく行われなくなってしまします。完全に伸ばしたDNA分子と比べると細胞分裂中期の染色体の長さは約1/10⁴にまで凝縮されています。

細胞分裂の時にはさらにクロマチン繊維が折りたたまれて分裂期のような太くて短い染色体に成りますが、どのようにしてそのような分裂期染色体ができるかは詳しくはわかっていません。しかし、クロマチン繊維がさらに折りたたまれてループした状態になり、それがさらに凝縮して間期染色体になることは確かであるとされています。そして、さらにこのループが連なってできた構造が、さらにもう1段階、またはそれ以上の回数、折りたたまれることによって、分裂期染色体になると考えられています。

追記・参考文献

  1. 「ヌクレオソーム」は厳密にはヌクレオソーム・コア粒子とリンカーDNA1つを合わせたものをさすのですが、「ヌクレオソーム・コア粒子」の意味で使われることもあります。
タイトルとURLをコピーしました